
国や地方政府の政策立案において、深いところで関わるNRI。例えば虹橋に計画されている新交通ターミナルの建設において、NRIは周囲にビジネスパークを作る提案をしているという。軌道交通が発達すれば、その周りには必然的に都市ができあがる。予定されているターミナル周辺に都市機能がない現状を批判して、NRIは新しい街づくりを提案するのだ。この話をたとえに、天野は言う。
「政府が持つ元々の都市計画を変更しませんかという話ですから、かなりインパクトのある提案です。その結果がどうなるかはわからない。しかし、夢の話を国家レベルで語ることができるのが、NRIの仕事の面白さですね」
リスクを負わずに物事を考えられるのがコンサルタントの魅力だと語る天野。細かな販売ノルマや数値目標があるわけではない。だから、ストレスを感じることもないという。
「何かを背負ってやるとつまらない。クライアントには思いもつかない視点から新しい提案をしていくのが我々の仕事ですから、常に自由な発想でいなければならないんですね」 しかし、自分の専門である環境・エネルギー政策に話がおよぶと、天野は途端に慎重な姿勢を見せる。自由な発想をするということは、好き勝手に物事を語ることとは違う。コンサルタントという、目に見えにくい裏方で成果を出すことが求められる仕事だからこその責任の重さが、そこにはある。
中国における環境およびエネルギー政策は、国内のみならず世界中から注目を集める熱いテーマだ。そのホットイシューを専門とするコンサルタントである天野は、自らが主題とするフィールドの熱気とは裏腹に、いたって冷静に物事を分析し、慎重に語る。
「環境にしろエネルギーにしろ、技術的なものは揃っている。日本が持つ最先端の技術を導入するだけでよければ話は簡単です。しかし、中国においては技術の話ではなく、政治の問題にウエイトがかかってくるんですね。これだけのボリュームを持つ国家ですから、いかに普及レベルで技術導入を考えていけるかが課題となってくる。政府の方針が大きく絡んでくる以上、慎重にならざるを得ません」
一方で、京都議定書の批准における国際交渉のコンサルティングに携わるなど、政治を左右する国家レベルの大きな仕事ができるのもまた魅力だ。地球規模に影響がある政策に関われるのも、NRIのコンサルタントならではだ。
妥協しない人――それが天野の掲げる理想のコンサルタント像だという。仕事にストレスはない。しかし、クライアントとの対応はいつも怖いのだという。「恐怖に打克つには完璧を目指すしかない。完璧な仕事をしたという自信が持てなければ、真剣にクライアントに向き合うことはできないからです。それができないと逃げ出すことになってしまう。最後までやり切る強い意志があるかどうか。これは能力より、ハートの問題だと思います」
コンサルタントという仕事の魅力と重みの両側面を深く受け止めているからこそ、ひとつひとつ慎重にことばを選ぶかのように、天野はそう語るのだ。
