自動車のブランディングは自己価値の創造に通ず

梅松林(北京分公司 総経理)

国産ブランド確立のために見習うトヨタモデル

中国では、かつては単なる交通手段にすぎなかった自動車は、いまや富や身分を象徴する記号となった。BMWやメルセデスなど、輸入高級車へのブランド志向は強まるばかり。それは国が豊かになった証拠でもある反面、中国の自動車産業を思えば手放しで喜ぶことはできない。

北京分公司の代表を務める梅は、自動車業界を専門とするコンサルタントであり、外資系ブランド車全盛の現状を憂うひとりだ。「中国メーカーが低価格路線から脱出し、中高級車市場に参入するためにはブランド構築が欠かせない。外資系ブランド車がシェアを拡大するなか、ことは急務を要しますが、だからといって一朝一夕でできるものではありません」

梅は、トヨタを例に話を続ける。「フォルクスワーゲンとGMが独占していた市場を突破し、著しい成長を遂げています。車の品質やデザインはもちろんですが、トヨタの素晴らしき企業文化が中国で認められているということでしょう。その精神に賛同した優秀な人材がトヨタに集まり、そこでさらに力をつけていく。人材の成長が、企業の成長を支えているんですね。これこそ、企業が持つブランド力あり、消費者から厚い信頼を集める源なのです」

梅の見解によれば、トヨタは丹念にブランド力を磨き続けることによって、単なる自動車メーカーではない存在になった。この点を、中国の自動車産業は何より見習うべきだという。目先の利益に走らず、製品の質を高めることで市場から信頼を得ること――ブランドマークを外してしまえばどこのメーカーの車なのか判別できないような、模倣品まがいのものを作っていては、いつまでたっても世界に通用する独自のブランドを確立することは出来ない。梅は、そこを何より危惧している。

徹底的なマーケティングを行うことで市場ニーズを掘り下げ、製品開発に成功してきたのが日本の自動車産業だ。近年、中国においても、多くの国産メーカーが消費者を細分化することで特徴のある車作りを進めるようになってきている。消費者層ごとに異なるニーズを分析し、中国人が求める自動車を作り出すことが、今後の国産メーカーの生き残りと発展につながるのだと梅は見ている。

開発や販売、およびサービス戦略など、NRIは自動車業界において幅広くコンサルティング業務に関与している。とりわけ課題が多いサービスの分野で、数多くの実績を残してきた。販売ディーラーの顧客流出を食い止めるためには、アフターサービスの充実が欠かせない。細やかなマーケティングに基づく施策でサービスショップへ顧客を囲い込み、長期的な優良顧客の獲得につなげる戦略立案を、NRIは提供し続けている。顧客とメーカーとの信頼関係が、国産ブランドの確立につながるのだと強く信じる梅は、中国自動車産業のために、今日も身を尽くすのだ。

自動車のブランディングには長期的戦略が必要なのと同様に、コンサルタントとしての信頼も地道な下積みが大切だと梅はいう。「自分を磨き、研鑽を積むことによってのみ、自分というブランドを作り上げることができるものなのです」 北京事務所代表として、自らをブランディングできる新しい力を、梅は求めている。

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