
コンセプトエンジニアとして、横井が初めて中国を訪れたのは1997年。1989年からITユビキタスネットワークに携わってきた横井は、「日本企業のサポートではなく、中国の企業からの仕事を増やしていきたい」と語る。
2008年の北京オリンピック開催、2010年の上海万博開催と、今の中国は70年代の日本に酷似している。しかし、その変化のスピードは日本の約4倍、10年後の2020年には横井が初めて中国を訪れた1997年当時の日本のようになっているだろうと予測する。
中国を中心に、アジア諸国がどう発展していくのか楽しみだ。
NRIの社是のこの言葉と、中国関連ビジネスに長く関わってきた父親の『人と仕事、どちらか選ぶなら人を取れ』という教えが、現在の横井の仕事の姿勢につながっている。
こんなエピソードがある。中国の顧客から、あるプロジェクトについて、欧米コンサルティング会社より横井に依頼したいと言われ、提案書を持って地方都市へ飛んだ。白酒を飲みながらアニメの話などで盛り上がるが仕事の話にはならない。今日は提案書を渡すだけで終わりかなと思っていると、「契約します。今から詳しい話をしましょう。」と、場所を会社のオフィスに移して話し合い、そのままこのプロジェクトは動き出した。「お客様が私を信用してくれる。だから私も信用したい。」これが中国での仕事の進め方。お互いへの信用が何よりも重要なのだ。
普段から横井は、お客様に頼まれたら断らないというスタイルを貫き通している。「いつもギブギブギブアンドテイクです」と笑って言う。培った信頼関係の上に大きなプロジェクトが成り立つ。顧客との信頼関係構築には、目標達成とは違う価値観が存在する。概念の違い、キーマンの選定、実際にイニシアティブを持っている人物が誰か、役職だけでははかり知れない人間関係など、中国独特で外部からはわかりにくい、複雑な文化、習慣がある。綿密な調査を重ねそれらをあぶりだしていかねばならない。
NRIはフレームワークに当てはまらない仕事の進め方で、徹底的にお客様と一緒に汗をかきお客様の事業と併走する。泥臭い方法ではあるが、マニュアルに則った欧米式コンサルティングより効果が高い。
現地コンサルタントにはNRIの経験をいい意味で盗んでほしいという。今の中国は、ある意味で完成されたものを自由に選べる状態。短絡的に物事を考えずに、それが完成までどのようなプロセスを経てきたかを「なぜ、なぜ」と質問してほしい。そうすることによって本当の意味で日本の知恵やNRIのノウハウを学び取ることができるだろう、と横井はエールを送る。
そんな横井だが、実は上海での滞在時間はきわめて少ない。自分を信用してくれる顧客から呼ばれれば何処へでもすぐ飛んでいくからだ。「移動はいつも夜ですよ」と笑う。横井は彼を必要とするお客様に会うために、今日も世界のどこかの空港にいるだろう。
